藤間蘭黄  日本舞踊の世界

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新曲浦島

今週末14日、国立劇場舞踊公演「素踊りの会」に初めて出演させて頂く。
長唄『新曲浦島』。
坪内逍遥が、自ら提唱した「新楽劇論」の理念に基づき、明治37年に発表、全3幕、能から邦楽、洋楽まで駆使する壮大な構成のため、全編上演はされないまま、その序曲が今に残った。
祖母の藤子はこの曲に、昭和17年、「素踊り」で上演すべく振り付けた。一番身体が効いた頃の振付。身体全部をたっぷりと、舞台を大きく使って、大海原のうねり、流れる雲から、そこに暮らす漁民の息遣いまで豊かに表現している。
蘭黄は10代の頃、初めて本格的な「素踊り」として踊った曲である。写真は、その時誂えた舞扇。藤子による箱書き。今回もこれを使う。
衣裳・かつらの力を借りずに、身体だけで情景を描き出す素踊り。初めての時は、ただ只教えられるままに身体を動かしていた。
それから35年あまり。
様々な踊りを経験し、自身も振付をするようになって、この『新曲浦島』の振付の凄さが少しずつ解ってきた。
釣竿を担いで登場するだけで、そこが何処なのか、どんな天気なのか伝えなければならず、その釣竿が、時に海になり、波になる。
扇子一本で、夕焼け空の移り変わる様を見せる。
果てはその扇子を海に投げて、波間に漂わせる。
そうかと思うと、漁を終えて、苫屋へ帰る漁師となる。天候を気にしているかと思えば、湊に吹き渡る風となり、再び漁師に戻って船に乗る。遠くの海に仲間の船を見付けて声をかけ、沖に漕ぎ出す。
小さい波が立ち始め、やがて大きなうねりを伴う夕嵐となる。
「役を踊る」歌舞伎舞踊の要素と、扇子一本で森羅万象を表現する明治以来進化させてきた日本舞踊の技法の融合である。R
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by rankoh-f | 2015-03-13 07:34