藤間蘭黄  日本舞踊の世界

rankoh.exblog.jp

<   2008年 10月 ( 3 )   > この月の画像一覧

文屋

「ぶんや」と読む。
平安の歌人。六歌仙の一人、文屋康秀(ぶんやのやすひで)のことである。

六歌仙とは、在原業平、僧正遍照、喜撰法師、大伴黒主、小野小町、そしてこの文屋。

この曲は、そもそも、5人の歌人が小野小町を口説くという趣向の5段返しの
「六歌仙容彩(ろっかせんすがたのいろどり)」という五変化舞踊の中の一つで、
これを独立した一演目として上演している。

ちなみに、1831年の初演時には、四代目中村歌右衛門という踊りが上手い役者が、
小町役の役者を相手に、5人を踊り分けたらしい。

小町の部屋に忍び込もうとする文屋康秀と、それを阻む官女たちのやり取りを
軽妙に見せる踊りである。

官女に止められて、「鼻の低さよ谷の梅」などとからかったり、
小町のもとへ通う切ない気持を、わざとおどけて語ったり、
初演当時江戸で流行った歌で踊ってみたり。
官女が「恋尽くし」で問いかけると、それに答えたり、
答えに詰まって、また流行の端歌で踊ったり。

平安時代の公家が、江戸っ子の風俗を踊る。これが清元「文屋」の眼目である。
公家の品のよさと、江戸っ子の粋。
上手くブレンドさせなくてはいけない。

「展覧会の絵」に挑戦するリサイタル「蘭黄の会」。
ここで「文屋」も踊る。

11月18日火曜日、国立小劇場。
午後6時半開場、午後7時開演。
全指定席7000円。R
by rankoh-f | 2008-10-28 00:00 | 一言解説

展覧会の絵

モデスト・ムソルグスキーの「展覧会の絵」。

プロムナードから始まり、異なる10のシーンを描くピアノ組曲である。
ラヴェル編曲による管弦楽で有名なこの曲を踊る。
と言っても、オーケストラ曲でもピアノ曲でもなく、邦楽に編曲した言わば長唄組曲である。
来月18日に開催する14回目のリサイタル。
ここで発表する新作に今年はこの曲を選んだ。

ピアノ曲をどう踊るか…

日本舞踊には様々な表現がある。
特に伝統的な、歌舞伎の「仕草」に由来する「振りごと」は、演劇的な要素も多く含み、いかにその「役」になるかが大事である。
しかも、我々現代の日本舞踊家が、歌舞伎と異なる「日本舞踊」の特徴としてしばしば提示する「素踊り」では、一つの曲の中で一人の踊り手が様々な人物を踊り分け、情景を描く。

今回、ここに着目した。

ムソルグスキーの楽曲を聴いていると、日本の四季の風景が見えてくる。
春の雪解け、若草に舞遊ぶ蝶。
満開の桜、乱れ散る花吹雪。
蝉時雨。夏の物憂い午後。
紅葉、秋草、仲秋の月。
冬枯れの野原に舞う風花。
吹雪。銀世界。

さらにここに様々な心情を重ねてみた。
春は何かが始まる期待。
夏ははしゃぐ気持ちと熱く燃える情熱。
秋は成就の充実感と成し得ぬ悔恨。
冬は静かな達観。

こうした心の動きを四季の移ろいに乗せ、色々な人物、風景を「素踊り」で踊る。
日本舞踊の技術を駆使して表現する。

挑戦である。R
by rankoh-f | 2008-10-23 09:33

「踊らいぶ(おどりらいぶ)」

一年おきの「踊らいぶ」が、今週末11日に浅草公会堂で開催される。
これは、日本舞踊協会と台東区芸術文化財団の共催公演で、
13年前に始められた。
蘭黄が所属する日本舞踊協会東京支部城東ブロックが主管する、
いわば浅草公会堂の自主公演である。
一回目から変わらない番組立ては、
まず、台東区内にある東京芸術大学の協力による長唄作品。
次に、コクのある古典舞踊。
最後は、地元浅草在住の春日とよ栄芝師の音楽構成による小唄の舞踊劇。
三本立てで、昼夜2回公演である。

この小唄の舞踊劇の脚本を毎回書いている。
1回目は、ねずみ小僧の孫、ねずみⅢ世を追いかける黒門町伝七の娘お伝と子分のだんご三兄弟。
2回目は、ピノキオを江戸に移して、左甚五郎ならぬ右手新五郎の夢物語で大人の童話。
3回目の、芸者が活躍する女忠臣蔵は歌舞伎仕立て。
4回目は、ためし酒、船徳、平林、文七元結に寿限無の落語ネタ、
5回目は、オペラ座の怪人ならぬ浅草座(こうかいどう)の快人でミュージカルの世界。
そして、6回目の今回は、シェークスピアの「夏の夜の夢」を題材にした。

我ながら、よくもまあでまかせに書いたものだと思う。

因みに、今回の番組は、
序幕に芸大ならではの「九重の空」、
次は昭和の舞踊喜劇「鏡」
そして書き下ろしの「仲秋夢城東(めいげつのゆめはあずまじ)」の三本。
昼の部正午、夜の部16時半開演。
全自由席で5,000円、当日券有。R
by rankoh-f | 2008-10-08 10:01