藤間蘭黄  日本舞踊の世界

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文屋

「ぶんや」と読む。
平安の歌人。六歌仙の一人、文屋康秀(ぶんやのやすひで)のことである。

六歌仙とは、在原業平、僧正遍照、喜撰法師、大伴黒主、小野小町、そしてこの文屋。

この曲は、そもそも、5人の歌人が小野小町を口説くという趣向の5段返しの
「六歌仙容彩(ろっかせんすがたのいろどり)」という五変化舞踊の中の一つで、
これを独立した一演目として上演している。

ちなみに、1831年の初演時には、四代目中村歌右衛門という踊りが上手い役者が、
小町役の役者を相手に、5人を踊り分けたらしい。

小町の部屋に忍び込もうとする文屋康秀と、それを阻む官女たちのやり取りを
軽妙に見せる踊りである。

官女に止められて、「鼻の低さよ谷の梅」などとからかったり、
小町のもとへ通う切ない気持を、わざとおどけて語ったり、
初演当時江戸で流行った歌で踊ってみたり。
官女が「恋尽くし」で問いかけると、それに答えたり、
答えに詰まって、また流行の端歌で踊ったり。

平安時代の公家が、江戸っ子の風俗を踊る。これが清元「文屋」の眼目である。
公家の品のよさと、江戸っ子の粋。
上手くブレンドさせなくてはいけない。

「展覧会の絵」に挑戦するリサイタル「蘭黄の会」。
ここで「文屋」も踊る。

11月18日火曜日、国立小劇場。
午後6時半開場、午後7時開演。
全指定席7000円。R
by rankoh-f | 2008-10-28 00:00 | 一言解説