藤間蘭黄  日本舞踊の世界

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保名

「安倍保名」
清元『保名』の主人公。
あの陰陽師、安倍晴明の父と言われている伝説上の人物である。
この保名は、許嫁で恋人の「榊の前」が自害したことにより気が狂ってさまよい歩く。

保名はやがて榊の前の瓜二つの妹、葛の葉姫に出会って正気を取り戻す。
そして狩りで追われてきた白狐を救うものの、追ってきた敵に打ちのめされる。
そこに現れた葛の葉姫に助けられ、故郷の阿倍野に帰り、葛の葉と夫婦になる。
そして生まれた子供が安倍童子。
ところが、この女房の葛の葉は、実は保名に助けられた狐の化身。
保名の危急を救うべく葛の葉姫に化けた。
6年後、本物の葛の葉姫が保名のもとへ訪ねてくると、
子供を置いて泣く泣く故郷の信太の森へ帰ってゆく。
この残された童子がのちの清明であるという。

「葛の葉」伝説をもとに出来た、人形浄瑠璃や歌舞伎の『芦屋道満大内鑑(あしやどうまんおおうちかがみ)』のあらすじ。

陰陽師、安倍晴明の常人ならざる力の理由付けとして、
霊力のある動物との「人獣婚」伝説をうまく利用したのであろう。

清元の『保名』は『芦屋道満大内鑑』二段目の「小袖物狂の段」をもとに作られた。
目の前で恋人が自殺して気が狂ってしまった男。
10年ぶりの挑戦である。R
by rankoh-f | 2014-09-23 23:23