去る4月25日、母の蘭景が死去した。
享年85歳。
昨年春に肺癌が見つかるも、自覚症状がないので経過観察するうち、昨年末に胃に転移がみられ、
12月、1月と2度、内視鏡手術をした。経過は良好で、食は細くなったものの、何でも食べられていた。
6月の歌舞伎座での「藤間流大会」では蘭黄と『菊の栄』を踊ることにもなっており、
亡くなる直前まで全く元気に過ごしていた。
入浴中の脳出血による急死。
翌26日、蘭黄は、お世話になった他流の先輩の師歴60周年の記念の会への出演を控えていたため、
お弟子さんたちにすぐに知らせるわけにもいかず、駆けつけた弟夫婦に後を頼んで劇場へ。
夜の最後の出演を終えて20時半過ぎに帰宅。すぐに家元始め各方面へ連絡した。
お弟子さんへはまず最長老からと思い、電話をした。
当夜も蘭黄の舞台を観に来てくれていたので、その帰宅を待っての電話口。
さぞ驚き悲しむだろうと恐る恐る母の死を告げると、驚きはしたものの、取り乱す事なく、
まず、当夜の舞台の無事を言い、一門への連絡を全て引き受けてくれた。
母が祖母のところに養女にきた12歳の当初から今日まで、73年間の付き合い。
90歳を超えた今でも毎月の稽古日に通ってくる「矍鑠」が着物を着て歩いているようなその方に、
思わぬところで力付けられた。
物理的にも心理的にも何の準備もないまま、慌ただしく通夜・密葬を終え、
あっという間に2週間が過ぎた。
まだ信じられない、というのが正直な気持ちではある。
死後の諸手続き、本葬(5月29日)の準備など、やらなければならないことが目の前に山積みされており、
それを片付けていくことで、なんとか平常心が保てているのかもしれない。
故人へのご厚情に衷心より感謝申し上げます。
数々のお悔やみを有難うございます。
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